がったん日記 2005年8月


2005年8月29日(月)「掲載駅を振り返ると」

 今、がったんに掲載した駅を振り返ったりしてるんですけど。次の調査に出かける参考に。今年の夏は出かけられなかったですから、たまってるんですね(笑)。で、そうしたら、結構、主要駅が漏れていたりとか、「〜前」とかの「前」が抜けてたりとか。表記に関わる部分が多いんですけども、ミスに気づき、慌てて訂正している駅が何駅かあります。落ち着いて整理していきたいと思ってます。はい。


2005年8月27日(土)「再開、です」

 すみません。ちょっとお休みさせていただきました。この秋も、少しずつの更新になると思います。息長く続けていきたいと思いますので、末永くお付き合いいただければ幸いです。
 さて、この夏はいろんな事情があり、はじめて調査らしい調査に出かけない夏でした。なんか調子が狂っちゃうんですが。まあ、元気に過ごしていきたいな、と。そんな風に思う夏の終わりです。皆さんは、いかがですか?


2005年8月16日(火)「バスの話の続き〜情報が欲しい!」

 バスの話をもう少し。今福さんのメールを紹介します。
<今福さんのメール>
 志木駅東口バスターミナルに国際興業バスのリフト付路線バス・浦和駅西口行きが停車していたので、乗車した。同バスターミナルにある国際興業バスの路線は、いずれも車いす対応バスは、時刻非固定・時刻非表示だった。それに引き換え、東武バスは、時刻表示していました。
 ここで、気づいたことは、志木市内の歩道の設定が、車道との縁石で区別するフラット設定であったから、ツーステップリフト付バスは、一般乗客にとっては、スリーステップバスとなるのであった。バスステップの1段の高さが高いから、バスに乗り降りするのも一苦労という感じだ。以前、国際興業バスのワンステップスロープ付バスで、志木市役所前で乗降車した時は、スロープ勾配が急勾配で、とても危なかった。国際興業バスのワンステップスロープ付バスは、西武バスと違いニーリング機能を装備していないから、なおさら高い。
 岩手交通バスは、ノンステップバスがなく、ワンステップスロープ付バスですが、時刻非固定です。仙台市交通局ですら、頑として、時刻非固定を崩しません。車いす対応バスが少なければそれに反比例して時刻固定・路線固定・時刻表示をして、車いす使用者等にウェルカム姿勢を示すべきなのに、その逆を行くものですから、岩手の知人の電動車いす使用者たちは、バスをほとんど利用できない状態です。バリアフリー情報は、地方の障害者にこそ必要です。

…今福さん、ありがとうございました。時刻表に車いす対応バスの時刻が表示していないと、いつ来るかわからないから利用しようがない。ステップの数、リフト、スロープ等の形状など、車両を工夫すると共に、降りる場所である路面も同時に改良しなければうまくいかない…。今福さんのメールを読むだけでも、まだまだ考えることはたくさんありますね。
 <情報>がやはり、バスに関してはあまりにも少ない。鉄道も少ないけれども、その比ではない。それだけ地域に密着した<生活の足>とも言えるのでしょう。だからこそ、情報としてはあまりにも地元向けの情報になるので、総合的なまとまった情報としては流れにくいのかな、と。だけど、あれば意義のある情報だと思うし、鉄道と結びついたりすれば、便利だなあ、と感じるんですけども。
 バスのホームページを作るとすれば、車いす対応バス路線一覧、車いす対応バスを明記した時刻表とか…。もう既に誰か作っているかな?「がったん」の姉妹サイトを作るときは「ごっとん」にしようと、密かに計画している今日この頃です(笑)。


2005年8月15日(月)「乗り物の安全性について〜航空機の視点から」 

 今福さんからのメールで、興味深い記事を見つけました。紹介しますね。
<今福さんからのメール>
 8月1日(月)NHKのクローズアップ現代の「空の安全は取り戻せるか」を見た。内容は以下の通り。
 今年に入り日本航空や全日空など、日本の航空各社でトラブルが続発している。3月に業務改善命令を受けた日航は4月に改善措置をまとめたが、その後も車輪の脱落などトラブルはとまっていない。日航が独自に原因を分析した報告書によると浮かび上がってきたのが運航の「定時性」の問題だった。ライバル会社との激化する競争のなか、旅客機を定刻通りに飛ばそうとするあまり、現場に無理が生じているという調査結果がでたのだ。「定時性」の追求が結果として安全意識をおろそかにしたと報告書は指摘している。番組では「定時性」が現場でどのように追求されているのか、その実態をルポして、航空会社に課せられた安全と効率の両立の問題を描く。
 その中で、興味深い情報があった。
@JALが「定時性」を確保するために、小型機を導入しているという。
 その理由は、着陸から離陸までの整備時間を短縮化するためという。つまり、離陸の「定時性」を確保したいからというのだ。
これは、電動車いすを使用する障害者にとっては、電動車いすが保管できない航空機が増えることを意味している。地方空港のバリアフリー化問題のひとつとしてあった小型機による電動車いす収納ボックス問題の都市版化を意味している。
A事故情報が、JAL内部でも共有化できていないというのだ。航空機各社の合併で、JAL内部に複数の元会社集団がある形だ。これまた、車いす使用者の移動環境に共通して痛感するところだ。鉄道・バス事業者間内部・外部における事故情報の共有化が、ほとんどなされていないから、各地で障害者の事故が起きる。
B交通事業における「定時性」を求める精神的プレッシャーは、安全性と両立しにくいように思える。わたしたち車いす使用者にとっても、交通事業における「定時性」は、見えないバリアとしての求める精神的プレッシャーである。
 
…今福さん、ありがとうございました。
 今回のメールは、航空機の安全についての話題なんですが、これは鉄道にも当てはまる話題だと思います。競争原理が思い切り働くと、どうしても安全は2の次になってしまいがち。そして、現場の職員にも大きな負担がかかるわけで、よいことはなにもないように感じます。ただ、その結果、目的地への到達時間が短縮されたり、本数や便数が増えることで、一面的には便利になったように感じる。そして、それが日常的な風景になっていく…。でも、どれだけ早く目的地に着けても、そこまでの距離は変わらないわけで、なにか不自然なカタチの上に成り立っている便利さ、といった感覚を、私たちは忘れてはいけないんじゃないかと思うのです。
 尼崎の列車事故でも、運転士さんたちへの労働環境はかなり悪かったと聞きます。ストレスの多い、失敗の許されない環境の中で、私たちが身を委ねる乗り物が動いているのだとしたら…。私たちの考え方を大きく変える時なのでは、と感じる今日この頃です。


2005年8月13日(土)「バリアフリーは、まず、<ワンルート確保>から」

 まず最初にご挨拶。たくさん情報をお寄せいただいているのですが、更新作業がなかなかできずにいます。今後少しずつ作業を進めていく予定ですので、お待ち下さいませ。では、今日の日記です。
 
ちょっとかみさんの実家のある新潟まで帰省していて、その帰りに直通臨時快速列車が走っていたので、「こりゃらくちん♪」と、久し振りに上越線で帰ってきました。新潟のあの地震では、在来線もかなりの被害を受けたと、いろんなネットでも見てはいましたが、実際電車で走ってみると、あれ?昔と変わらないなあ?という実感。それくらい、復旧が進んだということでしょう。隣の席のおじさんたちが、「あそこの崖、崩れたよなあ」とか、喋っていたのが印象的でした。ファイトです、新潟。
 で、今回車窓から見て感じただけでも、新潟県柏崎駅、群馬県高崎駅、埼玉県大宮駅で、自由に使えるエレベーターが設置されていました。主要駅が整備されていく、というのは、移動時にとても大きな安心感があります。県庁所在地なら、全国どこの駅でもエレベーターがある、くらいに整備されるといいのですが。残念ながらあともう少し、ですね。
 で、そんな時、やまなさんからメールをもらっていました。その中で「ワンルート確保」というコトバに、わかりやすく伝わりやすいメッセージを感じました。最低でも、ということです。とにかく、安心して使える駅を増やすことが先決かな、と。
 ただし、せっかくの<ワンルート>も、場所がわからない、とか、結局駅員さんがいないと、なんて使い勝手が悪いのでは困ります。その感覚に、地域性があるのでは、という指摘、興味深いです。具体的にいうと、西高東低、といった感じですかね。すごく大雑把にいうと。そういう<地図>も、示せると今後のよい指標になるのでは、と感じました。

<やまなさんからのメール>
●「バリアフリー駅」、全国主要駅の半数に 国交省調査(2005.07.29 23:08)
 高齢者や障害者が使いやすい駅を3段階の星印で表した「らくらくおでかけ度一覧表」(05年版)を、国土交通省が29日に公表した。00年に施行された交通バリアフリー法を受けて、主に1日の平均利用者数が5000人以上の駅を調査対象にしたもので、今年の対象は全国3937駅。このうち、車いすで駅の改札からすべてのホームに段差なく移動できる「☆☆☆」駅は約半数の1913駅となり、昨年より172駅増えた。、、、、アサヒコムよりの転載
  国交省段階ではまだとにかくワンルート確保ですが、福岡以来もう一段進んで使う立場を考えたバリアフリーでまければ、迂回率数倍ではダメと思うようになってしまいました。大阪でも新しい地下鉄エレベーターは交差点の角など、良く分かる一般出入口と近い位置に設置されるような気配です。進んだ地域と意識の無い地域の格差が広がってきたようで、先進地域では少し成熟してきたといえるのかも分かりません。


2005年8月9日(月)「調査に出れない夏ですが」

  諸般の事情により、今年の夏は長期の調査に出ることができずにいます。今年の夏はたくさんの人に会いたくて、実際に何人かの方に連絡を取り、日程を調整したりもしていたのですが、やはりなかなか思うようにいかず、すべてキャンセルすることになってしまいました。予定を空けていただいていた方々、ご迷惑をおかけしました。
 今はたまっている情報をアップしていくこと、また、ネット経由で新しい情報を仕入れたり、「がったん」のホームページ内の整理をしていきたいと思っています。また、もう少し時間がたったら、新しい調査の日程を組み、出かけていきたいと思っています。


2005年8月5日(金)「補装具給付に成功した、やまなさんのレポート」

  やまなさんから、補装具給付に成功したとのメールをもらいました。きっと、他府県でも参考になる方がいるのでは、と思いますので、紹介します。制度はなかなか複雑で難しいですが、逆に「味方」につけて、道を切り開く。やまなさんの実践が、それを雄弁に物語っています。

<やまなさんからのメール>
 歩行出来ない障害者には電動車椅子が無ければ、自立した社会参加など絵に描いたモチにすぎません。皆さんに知ってもらって、必要な人には電動が給付されるのが当然になるようにしたいものです。下肢障害だけの人がもっと電動車椅子を必要とすればもっと実用的な製品が出来るようになると思います。
 私は下肢障害1級で歩行出来ませんが、補装具の電動車椅子の申請を区役所の窓口で受付けてもらえませんでした。理由は重度の下肢障害だけでは手動車椅子しか出せないことになっているからと説明されてきたからです。しかしよく調べてみると疑問が出て来て、半年かかりましたがこの度、大阪市から電動車椅子の給付を正規に受ける判定を取ることに成功しました。
これまで諦めていた下肢障害者への電動車椅子給付が可能になりましたので、参考にしていただければと思います。少し長くなりますがこの知識と手順で皆が可能です。

補装具給付制度における下肢障害者への電動車椅子給付についてレポート

 電動車椅子の補装具給付条件は、運用基準として「上肢にも障害があること」が全国的に行われてきていました。厚生労働省の担当専門官は、「実際の運用判断は各地方自治体の自由裁量であり、実際に各自治体でどのような運用をしているかは関知しないし、そのような調査も行ったことは無いので、各自治体がどのような運用をしているかは知らない。」「しかし、全国的に上肢にも障害のあることを運用基準にしていた事は承知している。」というのが現状です。
 これを受けて大阪市では「電動車椅子交付基準」で下記の基準を実施していました。
4、電動車椅子の交付の目安は以下の4条件をすべて満たすものとする。
(1)学齢児以上少なくとも小学高学年以上うで、
 ア、重度(1・2級)の下肢機能障害者であって、電動車椅子によらなければ歩行機能を代替できないもので、かつ、上肢に何らかの障害を有す者。(以下略)
 つまり完全に歩行が出来ないだけでは補装具申請を受け付けない。福祉の窓口で申請を受け付けず、判定センターの診断すら受けられませんでした。理由は、「両腕が健全なら手動車椅子が使え、そのような状態の人に電動を給付すると残された身体機能が衰える。」とのことでした。本音は電動車椅子の給付予算を押さえたいですが、福祉・介護関係者は一般的にこの誤った考え方をよく口にします。しかし、手動車椅子では単独外出の自由は難しいことは皆が知っているにもかかわらずにです。結局、手動車椅子では介助が必要で自立出来ないのです。そこで国の基準を調べてみました。

平成13年6月18日、(障発第260号)
「補装具給付事務取扱指針の改正について」
(各知事、市長あての厚労省障害福祉部長通知)によると基本的事項に
1、補装具は、身体障害者・児の失われた機能を補完又は代償する用具であり、身体障害者の職業その他日常生活の能率の向上を図ることを目的として給付されるものである。このため給付にあたっては、身体障害者・児の身体の状況、性別、年令、職業、教育、生活環境等の諸条件を考慮して行うこと。

平成14年3月27日(障発第0327013号)
電動車椅子の給付について(身体障害者福祉法)
電動車椅子給付事務取扱要領、第1基本的事項
1、電動車椅子の給付は、重度の歩行困難者の自立と社会参加の促進を図ることを目的として行われるものであるから、身体障害者・児の身体の状況、年令、職業、学校教育、生活環境等の諸条件を考慮し、その是非を判断すること。
第2実施要項、1電動車椅子給付基準
(1)対象者 
ア、重度の下肢機能障害者であって、電動車椅子によらなければ歩行機能を代替出来ない者。(以下略)

つまり国の基準では正規には「上肢にも障害」との条件はどこにもないのです。どうも運用に関する想定問答か何かにそのような事があったようなのですが、現在の国の担当者が自治体で自由に判断する問題としている以上、上記の国の通達をたてに
各市町村の補装具給付担当者に、申請を受け付けないのは国の基準を逸脱していると迫ると、窓口で受け付けないのは誤っていることを理解してくれるようです。この度成功した実際の手順は以下の通です。

1、事前に自分の生活環境を写真など、資料を集め電動車椅子が必要な理由を客観的に理解されるようにする。(自宅周辺の坂、駅やバス停や生活に必要な場所への外出が手動では単独で行えない具体的な障害の状況など)、判定医に理解してもらえるような資料を作る。
2、自分の主治医があれば資料を見せて、自立した社会生活のために電動車椅子が必要との意見書を書いてもらう。(医師にまかすと忙しくてなかなか書いてくれないので、自分で書いて署名と印をもらうと良い。)補助資料なので病院の公印は必要無いので、理解のある医師ならサインと認め印だけなら無料にしてもらえます。(公印を押すと5千円とられますよ。)
3、役所の窓口で電動がなければ自立出来ないから、判定センターの判定を受けさせてくれと交渉する。1と2の資料を見せて冷静に説得すれば判定に持ち込めるはず。もしも役所側が大阪市のような運用基準をたてにダメと言ったら上記の国の基準を示して判定を受けさせないのは誤りであると理解させる。
4、判定センターに行けたら、まずケースワーカーの相談を受けるのでこの時に電動の必要なことを理解してもらうことが大切です。きちんと説明して味方にするのが第一関門です。次に判定医の整形外科医の診断になりますが、ここで正否が決まります。医師は資料を示して手動ではなく電動が必要な根拠をきちんと説明出来れば、役人よりは良く理解してくれるはずです。判定は医師の判断が全てですからそのつもりで。
5、もしも判定で不可とされたら、六十日以内に不服申立てをすれば、もう一度判定が受けられるはずです。これは行政法で決まっている手続きですから遠慮なく申立てしてください。今度は何故認められなかったか考えて、説得出来る資料を作って下さ
い。
 現在、大阪府は窓口受付けは原則的にOK、大阪市も前例が出来たので可能になりま
した。やりかたが分からなくて困っている人はご相談下さい。


2005年8月4日(木)「移動手段としてのスロープを考える」

 今福さんから頂いていたメールの中に、スロープに関する話題があったので、紹介します。
 
 <今福さんからのメール〜衝撃。東武東上線志木駅の「ホーム端スロープ」が、使えなくなった。>
 東武東上線志木駅の「ホーム端スロープ」(注)が、使えなくなった。本日、正午、同駅ホームに降車して、分かった。
駅員さん「ホーム端スロープは、安全確保のため使えなくなりました。車いす対応エスカレーターをご利用ください。」
私「車いす対応エスカレーターは、利用したくない。ホーム端スロープを利用できると思って、志木駅で降車した。車いす対応エスカレーターは、昨年2回も車いす使用者の転落事故が起きたから、反対している。利用を拒否している。東武東上線は、都内民鉄の中で一番車いす対応エスカレーターの駅が多い。ホーム端スロープの方が、安全だと僕は、思う。」
駅員さん「他の車いすの人は、車いす対応エスカレーターを利用されていますが・・・」
私「他の車いすの人は、車いす対応エスカレーターを利用されているかもしれないが、私は、利用したくない・・・」
 結局、上記のやり取りの末、ホーム端スロープを利用して駅舎外へ出られたが、今後、志木駅のホーム端スロープが使えなくなるのは、大変つらい、不便だ。現在、私は、車いす対応エスカレーター利用恐怖症になっているから、ホーム端スロープを使えなくなることは、志木駅を利用できなくなることを意味している。
 (注)ホーム端スロープとは・・・ホーム端がスロープ状になっているもので、車いす幅の舗装通路で、線路上を渡り、駅舎外に出られるもの。駅員誘導による線路横断が、危険であることから、近年徐々に少なくなっている。電車の運行本数、ダイヤにもよるが、車いす対応エスカレーターの危険性とどちらが大であるか・・・ムツカシイ問題である。
 東武東上線志木駅は、(橋上改札・コンコース〜地上)間は、南北ともエレベーターあり。(ホーム〜橋上改札・コンコース)間は上下線とも車いす対応エスカレーター。

…今福さん、ありがとうございました。スロープは昔は小荷物輸送を鉄道が主にになっていた時代、いろんな駅に当たり前に設置されていた設備です。今福さんが書かれているように、駅構内の線路を渡るタイプや、駅ホームからそのまま外へのルートを確保するタイプがあります。地方では駅の無人化や、降雪時の保守や安全確保が難しい点から、都市部ではダイヤが過密になることでの構内の線路上を横断することの安全確保が難しいという理由で、使われなくなってきています。(確かに北日本など、降雪時にはスロープは逆に危険である。凍結、降雪のため)。
 しかしながら、垂直移動を克服する手段としては、構造がシンプルで、既存のスロープを整備したり、既存ののホームに少し手を加えることで安価に実現できる、という利点があります。実際にJR四国や私鉄の名古屋鉄道では、積極的にスロープを活用し、バリアフリー充実の重要な設備として位置づけています。
 もちろん、自由に使えるエレベーターで移動できることが一番安全で、手軽に移動できる手段であることはもちろんですが、現実的に考えて急速に設置して行くには、予算面が壁になる。ならば、過渡期の移動手段として、もっと「スロープ」を活用していけないだろうか。車いす対応エスカレーターや階段昇降機での移動は、怖い、目立つ、セッティングに時間がかかる、駅員さんの都合に左右される、など、利便性に問題があることは明らかで、<日常的に、自然に使用する>ことを前提とした移動手段の確立が、今後のバリアフリーを左右すると考えています。


2005年8月3日(水)「続・路線バスに車いすを利用して乗車する、ということ」

 先日、日記にバスについての話題を載せたところ、やまなさんからメールを頂きました。交通手段としてのバス、公共交通機関としてのバス。いずれも一番身近な「生活の足」だからこそ、期待する部分が大きいのだとあらためて実感しました。以下はやまなさんと私のやりとりです。バスについて考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

<やまなさんからのメール>
 日記のバス問題拝見しました。
 車椅子での外出の基本は車だと言う主張が根強くあります。
1、「戸口から戸口へ」でなければ。  2、公共交通機関が利用出来るのは都市部だけ。  3、バスや電車があっても車椅子が乗れるようになっていない。  この辺りが主な理由です。
しかし、自分で自家用車を運転して車椅子に自力で移乗出来る少数の人以外は、移送サービスかタクシー、家族やボランティアの介助と運転に頼ることになり自由な外出の手段にはほど遠いのでは無いでしょうか。また、コストや効率の面からもあまり有効と思えません。やはり、基本は公共交通機関だと認識し、車椅子でも自由に利用出来る環境を整備することを共通の意識とする必要があると考えています。
 「田舎では現実に車しか無い」と言えば今はその通りかも分かりませんが、コミニュティバスや、その地方に即した公共交通を工夫して、車椅子が単独で外出できるように一歩づつでも進めていく事を目標にすべきです。
 「予約なしで、自分の必要な時に、単独で(介助者がついても)、行きたい所へ、車椅子でない人とあまり違わない所要時間で、」この基本的な要請は、大都市ではほとんど解決している問題ですが、それ以外の地域でどう実現していくかということです。地方では車の方がてっとり早いと公共のバスなどの整備をおろそかにして、車を基本にという主張には同意出来ません。
 交通バリアフリー法の根本的な問題は、公共交通機関は大都市だけで良いとしている点にあります。1日利用者が5千人以上としている制限を、目標はすべての駅や交通機関に広げることと明確に改めることが大切です。
 車は基本で無く「他に手段が無い、障害者の身体状況のために」などの特別な理由のある人達のために利用し易い方法を、別に作っておくもので、あくまでも基本は公共交通機関に、と考えた方が良いと思っているのですが、日本全体で考えると車を基本と考えなくてはと主張している、影響力のある学者がいて困ったものだと常々いまいましく思っています。
 吉田さんの環境からは違った認識があると思いますが如何でしょう?

<がったんからのお返事>
 やまなさんへ。おはようございます。
 私は田舎に住んでいたときに父が免許を持っていなかったため、出かけるときはいつもバスでした。それも仙台というところはバスがとても発達していて、坂道、狭い道どんなところでもやってくる、そんなイメージがありました。ですので、「バスの運転手になりたい!」という短冊を七夕でつるすような子どもになったのかな、と(笑)。バス停を全部暗記し、アナウンスが流れる前に
一番前の席で大声でアナウンスする(笑)、すばらしい子どもに成長したのでは、と。
 大学に入り、車いすで生活する友人たちとどこかに外出する際には、結局いつも車いすタクシーになる。で、病院から町中まで一直線。「戸口から戸口へ」です。もちろんそのころはバスにリフトやスロープはなかったし、(仙台は坂の町なので、低床バスの導入は難しいといわれていました。)バスに車いすで利用する、という発想はお互いなかった。でも、その彼らに自分が会いに行くときはバスで会いに行く。この、矛盾。今思うと、おかしな話ですよね。今だったら、バスで行こうよ、と誘ったり、4,5人でも強引にバスに乗り込み、運転手さんを困らしたりしているだろうに、と思いますけど(笑)。ただ、当たり前のことが当たり前にできない。そのことに、もっと自分達は気づいてよかったんじゃないか。今になると、そう感じます。
 ただ、今、母の岩手の実家に行くと、バスが廃止の瀬戸際に立たされていて、一日5本になってしまったバスダイヤに合わせて列車の時間を選ばなければならない現状があり、それも日中だけしかバスが走っていないので、朝夕はタクシーを使うしかない。ただ、みんなが困っているかといえば、みんなマイカーで移動し、一家に2台、3台の世界。バスの車内は3,4人しか乗客はいない。ひどいときは乗客はなく、空気を運んでいるバス。たまに来る旅人のために、バスがあるわけではなく、地元の人たちの生活の足のためにあるはずなのに、もう、バスが期待されなくなってしまった現実がある。人々のライフスタイルが長い年月でもう、決まってしまったのではないか。それでも、便利なら使うのか、大きな実験になる気がします。ただし、千葉県野田市のコミュニティバス「まめばす」のように、小型バス(車いすも乗車可)を市内均一100円で走らせ、成功している事例もあります。私が住んでいた頃は、単純に民間バスを委託で走らせていただけで、利用者が少なくやめてしまったと思っていたら、再び知恵を絞って成功したようです。野田市もマイカーが主体で、路線バスが縮小している地域。でも、アイディア次第で眠っている需要を引き出すこともできる。公共交通機関が必要な層が、しっかりとあることがわかります。
 考えてみれば、公共性という点でいえば、以前の国鉄で行われたローカル線が次々に廃止された時もそうだったように思います。あくまでも採算が重視され、日本各地から鉄道が消えていった。公共交通機関って、いったい何なんでしょう。
 しかし、今回の話は、走っているバスになぜ乗れない、という話。
 仕方なくマイカーに乗っている、もしくは乗せてもらっている「交通弱者」の層がどれほどいるか。声の小さい人たちの存在に目を向けなければならないと思うのです。
 「予約なしで、自分の必要な時に、単独で(介助者がついても)、行きたい所へ、車椅子でない人とあまり違わない所要時間で移動する」手段の確立することが必要、というやまなさんの意見に、私も同じ意見です。交通バリアフリー法の根本的な問題は、公共交通機関は大都市だけで良いとしている点も、目標を達成する為のとりあえずのラインとして捉えているのか、または5000人以下の駅は単に「努力目標」となるのか。考え方ひとつで、これからの方向性が決まってしまうような怖さがあると感じます。1日利用者が5千人以上としている制限を、目標はすべての駅や交通機関に広げることと明確に改めることが大切、というやまなさんの意見に賛成。「がったん」も、ゆくゆくは全駅の情報を載せていきたい。それがマニアックな情報として捉えられることなく、基本的な情報として認識される世の中になってほしいと感じる今日この頃です。
 ごめんなさい、いつもお返事が遅くなって。では、また。


2005年8月1日(月)「路線バスに車いすを利用して乗車する、ということ」

 今福さんが路線バスと車いすの関係についてメールニュースを送っていただきました。路線バスを車いすユーザーが利用する際の問題点をわかりやすく解説してくださっていますので、紹介しますね。

<交通バリアフリー法のバリアフリー化適用の路線バス事業者による路線バスのバリアフリーについて>
○車いす対応バスの路線固定や時刻固定や時刻表示・車いす対応バス路線一覧のホームページ表示等ソフト面でのバリアフリー化が必要。
→車いす対応バス(ノンステップバス・ワンステップスロープ付バス・リフト付バス)の情報〔上記車いす対応バスの台数・種別・運行路線・運行時刻〕について
○バス車両やバス停の整備等のハード面のバリアフリー化
→スロープの出し入れがしやすいよう、バス停の構造は、バスが縁石に正着できるように、切り込みテラス型バスベイとし、縁石の高さを15cmに。屋根、ベンチなども必要。

 …今福さん、ありがとうございました。メールニュースを要約させていただきましたが、各地域の路線バスにおけるバリアフリー化において、共通する内容だと思います。
 「がったん」では、今まで車いすと公共交通機関のあり方を、鉄道の側面から考えてきました。しかしながら、鉄道を利用するためには、自宅から何らかの方法で最寄りの駅まで行かなければなりません。中・長距離の移動ならばともかく、近場の移動ならば、自宅から目的地へ「ドアからドア」へマイカーでの移動がメインになっているのではないか。マイカーがこれだけ普及している現在、バスに対する車いすユーザーの需要が現実的にどれくらいあるのかな、とも感じていました。鉄道は長距離移動なので、かなり需要があるとは思うのですが、バスの場合は短距離移動で、マイカーと競合する部分が大きそうかな、と…。
 実際、私が今住む、千葉県の北西部の町では、路線バスにノンステップバスが導入されはじめてはいるものの、どうも利用率はかなり低いようで。実際に利用しているところを見たことがなく、バスの運転手さんに聞いても「ほとんどない」という状況。
 しかしながら、今福さんとやりとりをしていたら、当然ながら需要があるところには、需要がありますというお返事。「例えば、都内で、私が自信を持って言える路線では、都営・・・池袋駅〜渋谷駅、新宿駅〜東京女子医科大学病院。西武・・・清瀬駅〜久米川駅、久米川駅〜立川駅。国際興業バス・・・浮間舟渡駅〜東武練馬駅、高島平駅〜池袋駅。たぶん私の知らないところでも相当にあると思います。」なるほど。もしかしたら、路線バスは使えないとあきらめて、マイカーに流れている部分が大きいのでは、と感じるに至りました。
 公共の交通機関として、選択肢として「利用可能」な状況を準備する必要があると思います。そして、実際に利用するかどうかは、最終的に利用者に委ねればいいわけで。今現在、今福さんがおっしゃるところによると、「交通バリアフリー法で、新規更新するバスは、すべて低床化バス(床高65cm以下)で、スロープは、設置しなければならないと義務化されています。現在、ノンステップバスは、7500台。ワンステップスロープ付バスは、7000台近くになっていると思います。」とのことですから、うまく地域にとけ込ませることができれば、路線バス網が発達している地域では、一番身近な「生活の足」になるはず。ぜひ利用しやすいシステムを作っていきたいですね。