公共交通機関におけるバリアフリーの実態調査と研究

Study on the research of the actual conditions for Accessible and Usable

at the public transport systems

〜駅における垂直移動の方法を調査して〜

公共交通機関におけるバリアフリーの実態調査と研究

〜駅における垂直移動の方法を調査して〜


 実習やボランティア活動を通し、障害を持つ人が公共交通機関を利用することの難しさに気づき、バリアフリーの重要性を実感した。それを契機に、身体にハンディのない自分でさえ外出しづらいと感じる地域の公共交通機関では、どのようなバリアフリー対策がなされているのかを調査することにした。

序論では、問題の所在、研究の目的、研究方法について述べた。

第1章では、先行研究の吟味として、障害を持つ人が外出した際に重要となる、身障者用トイレのあり方と、これまでに考案されてきた様々な垂直移動の方法についてまとめた。

第2章では、研究の枠組みを示し、公共交通機関を使う人の多くは、日帰りのちょっとした外出や、毎日の通勤通学に利用しているという点から、調査対象駅を、筆者の最寄り駅を中心に、約1時間圏内で移動できる地域に定めた。さらに2つの異なる鉄道会社の駅を調査することによって、鉄道会社ごとの対応の違いも明確にする。

第3章では、各駅ごとの調査結果と考察を示した。駅により整備状況や問題点も多様であり、これらは、駅の新旧や規模の大小、地域性によるものであると考えられる。そのため、それぞれのニーズを充足するには、多様な努力を必要とするものであるといえる。

第4章では、調査を通して明らかになった問題点と、すべての駅に共通する課題、結論を示した。調査の結果、駅は大きく分けて、駅周辺に居住する者が外出の際の出発点として毎日のように利用する地域密着型の駅と、駅周辺にテーマパークやイベントホールなどがあり、遠方から初めてその地を訪れる人が目的地として利用する駅の2種類に分類することができると考える。当然、後者の方が1日の利用者数は多い。1日の平均利用者数が5000人以上の駅にはバリアフリー化が義務づけられたことにより、整備の優先順位が利用者数によって決められてしまった。しかし目的地の駅が整備されていても、居住地域の駅から乗ることができなければ、本当の意味で「公共交通機関を利用した移動」の円滑化を促進しているとはいえない。まず、駅を地域のコミュニティの1つとして育て、誰もが自由に移動できるようになれば、外出先でのバリアフリー化の需要も高くなり、設備の改善が図られるようになる。そうすることによって、すべての人が地域でも、旅先でも安心して過ごすことができる社会になっていくのではなかろうか。


目次

T.はじめに 

U.序章

   1.問題の所在 2.研究の目的 3.研究の方法

V.第1章 先行研究の吟味

   1.身障者用トイレのあり方 2.駅における垂直移動の方法

W.第2章 研究の枠組み

X.第3章 調査結果および分析・考察

Y.第4章 結論 課題 

Z.終わりに

参考文献および参考ホームページ一覧


T.はじめに 

卒業研究に取り組むにあたって、このテーマを選んだのは、私自身が公共交通機関を利用しての外出が不便な地域に住んでいるからである。例えば、私が市役所へ行きたいとする。自宅から最寄りの駅まではバスで平均10分。徒歩では30分以上かかる。バスターミナルから駅の改札まではさらに歩いて2分。電車に乗り、市街地最寄り駅まで16分。そこから市役所までは歩いて15分かかる。単純に計算しても合計で43分。バスや電車の待ち時間を考えると約1時間の道のりである。健常者の私でさえ面倒に感じる外出である。これが、身体に障害のある人や、高齢の人であったらどうだろう。まず、自宅から最寄り駅までのバス路線ではスロープやリフトのついたバスはほとんど走っていない。この時点で、車イス使用の人は別の方法を探さなければならない。杖歩行の人でなんとかバスに乗れたとする。しかし、改札までは踏み切りを渡って500mほど歩かなければならない。ここまででおそらく30分かかるだろう。さらに、この駅には改札口が東側にしかなく、反対の2番線を利用したい時などは、さきほど渡ってきた線路をまた反対側へ長い階段を昇り、跨線橋を渡り、昇った分だけ階段を降りなければならない。西側にも改札はあるのだが、朝と夕方のラッシュ時のみ開放されるのである。

「バリアフリー」という言葉が一般化し日常的に使われるようになり、街のいたるところで急速に「バリアフリー化」が進められている。しかし、このように、まだまだ取り残された地域があることは事実である。では、実際に駅によってどのように違うのか、それを確かめるべく、卒業研究のテーマとして取り上げることにした。


U.序章

1.問題の所在

1998年、長野冬季オリンピック・パラリンピックが開催されたことにより国民の「バリアフリー」に対する関心は、ますます高くなったといえる。新聞や雑誌でも「バリアフリー」という文字を見かけることが多くなった。しかし、現実には身体的にハンディをもつ人にとって、街に出ること、殊に公共交通機関を利用して外出することはまだまだ容易なことではない。それは、なぜだろうか。

「バリアフリー」という概念は、文字通り「障壁(バリア)」を「なくす(フリーにする)」ことだが、単にハードウエアのバリアをなくしただけでは、本当の意味でのバリアフリーは成立しない。私たちが目指さなければならないバリアフリー社会は、ハードウエアとソフトウエアの融合がなければ成立しない。

大ベストセラーとなった『五体不満足』の筆者、乙武洋匡氏に代表されるように障害を持つ人が自らメディアに現れることが多くなった。彼らがメディアを通して自らを語ることで、障害を持つ人への差別的な偏見の目は幾分減少したかに見える。乙武氏がいう「心のバリアフリー」は、徐々に浸透しつつある。しかし、心は開かれていても、果たして、相手の立場で考えることまでできているだろうか。つまり、使う人の視点、使う人の気持ち(=ソフトウエア)を大切にしてハードウエアの整備を行うことが最も重要なのではないだろうか。

2.研究の目的

 そこで本研究の目的は、誰もが利用する公共交通機関、中でも1日に多くの人が利用する駅に関して、どの程度バリアフリーが整備されているのか。また、それらは本当に利用者のニーズに適したものであるのかといった、現状を調査すると共に、残された問題点は何なのかを明確にすることである。

3.研究の方法

 駅という場所は、毎日様々な人が、様々な目的で利用する。その中で、駅構内での移動、または車両への乗降にバリアを感じる人は、実はかなり多いのではないだろうか。「バリアフリーというのは高齢者や障害者などすべての人が社会参加や自己実現を図っていくうえで障壁となっているものを取り除き、自らの意思で自由に行動できる生活環境や社会環境を整備していくこと。障害者と健常者との間の「敷居はずし」を行い、すべての人が共に生きる社会を作るノーマライゼーションという目的を実現するための具体的な手段であるとも言える(泉 泰行 福祉文化工房「とんとん」主宰 『ハンディマップがったん』1998年)。」つまり、駅のバリアフリー化が徹底されれば、車イスを使用する肢体不自由の人をはじめ、視覚に障害のある人、聴覚に障害のある人、高齢の人、そして、妊婦や小さな子どもたち、その他多くのバリアを感じる人々が、もっと暮らしやすくなり、すべての人にとって安全で快適な移動を提供することにつながるといえよう。そこで、まずは駅における移動に最も大きなバリアを感じると思われる、車イスを使用する人の視点で、駅の実態を見つめてみる。

 調査対象とする駅は、

1.JR横浜線 八王子駅〜成瀬駅の全11駅。

2.京王相模原線 橋本駅〜京王多摩センター駅の全5駅。

調査内容は、

  1.駅の外から改札口を経てホームまでの移動方法。

    (エレベーター、エスカレーターの有無)

  2.車イス用(身体障害者用)トイレの有無。

調査方法は、

上記2点について、自らの目で確かめることと、駅職員への聞き取り調査とする。


V.第1章

1.身障者用トイレのあり方

車イスを使用する人が外出した際に重要になってくるのが、まずはトイレであろう。数は増えてきたとはいえ、内容、数、共に、まだ不十分なものも見受けられる。では、どのようなトイレが望ましいのであろうか。「ハンディマップがったん作成委員会」の吉田二郎氏の意見と、実際に車イスを使用している人の意見を以下に簡単にまとめる。なお、同氏とは、2001年10月21日にお会いする機会を得て、貴重な意見を多く賜った。また、同氏の意見に賛同することが多くあり、氏の意見に同意することについては特に注記せず記述する。

@洋式のトイレであること。

→肢体不自由のほとんどの人がしゃがめない等、和式では利用が不可能な場合が多い。

A車イスが回転、もしくは余裕をもって入室できるスペースがあること。

  →回転できないと便座への乗り移りが困難な場合があり、また、介助者がいる場合は

その行動スペースが保障されなければならない。

B手すりがあること。

C緊急連絡用のブザーなどがあること。

Dおむつを交換ができるベッドがあること。

  →できれば大人にも対応できる大きさが望ましい。荷物を床に置かずに

すむようにもなる。

E公共の場所に必ず1つは分かりやすい場所に設置されたものであること。

→駅には当然設置されるべきである。最近は、新幹線だけではなく在来線の特急や普通列車の車内にも設置 されるようになってきており、これは鉄道会社の努力の1つとして評価したい。

F車イス用トイレは男子トイレと女子トイレの真ん中に設置されたものであること。

→車イス用トイレが、男子トイレの中にのみ設置されている場合、またその逆のである場合が散見される。

@〜Dについては、設計上(ハードウエア)の問題であるが、EFについては設置する時点での心配り(ソフトウエア)の問題である。公共の場所というのは誰もが使用する場所という意味である。誰もが使用するのなら、誰もが使用できるトイレがあって当然であろう。また、男子トイレの中にしかないからといって、女性の車イス使用の人が入っていくのは心理的な抵抗があり、その逆でも同様であろう。これらは設置する際に、自分が利用する立場になって考えるだけで解消できることではないだろうか。また、関西では、男女のトイレの中にそれぞれ1ヵ所ずつ車イス用トイレのある駅が多くあるというが、考えれば当たり前のことである。なぜ、車イス使用の人だけが男女共用でトイレを使用しなければならないのであろうか。しかし、スペースの都合などから1ヵ所しか設置できないのならば、せめて男女トイレの中央に独立させて設置されることが妥当と考える。

2.駅における垂直移動の方法

次に、車イスで移動する際、最大のバリアとなるのが「垂直移動」である。駅舎の橋上化、地下化が進むのと並行して、垂直移動を克服する方法が考えられてきた。そのいくつかを次にあげる。なお、前述の吉田二郎氏作成のホームページ(「週刊ハンディマップがったん」http://homepage2.nifty.com/gattan/index.htm 2001年10月)を参照し、筆者の若干の見聞をもって記述する。

@スロープ

ホームの端をスロープにし、線路を横断しやすくする方法。昔は全国どこの駅でも見ることができたというが、小荷物輸送の衰退、駅舎の橋上化、地下化、降雪時の線路の除雪の難しさ、無人駅や鉄道量の増加などにより、確実に姿を消している。安全上、線路横断時には駅職員の付き添いが必要であるが、工費は安く、駅員の肉体的負担、利用者の心理的負担も少なくて済む。四国では、主要駅にスロープを積極的に活用している例が多く今後の復権を期待されている。

A車イス専用階段昇降機(チェアメイト)

キャタピラの付いた台車に車イスを乗せ、階段を昇降するもの。客観的にみて、特に下りは恐怖感を抱く人が多そうである。また、利用には事前に連絡が必要であるが、使用方法を習熟していない駅員も多く、結局人力で昇り降りするということもある。使用中は周囲から注目を浴び、心理的負担も大きいと思われる。













B車イス専用リフト (エスカル)

階段の側面に設置したガイドレールに沿って、昇降する箱型の昇降機。かなり大型で、使用中に付き添う駅職員の多さ、警報音など、周囲の注目を浴びることが予想され、心理的負担は前述のものと同様大きい。また利用には事前に連絡が必要となる。














C車イス対応エスカレーター

近年、首都圏を中心に急速に普及しているタイプ。エスカレーターの板が3枚水平になり昇降するもの。エレベーターに比べ、比較的安価に設置でき、普段は通常のエスカレーターとして利用できるなど、一見便利に感じるが、使用中は他の人の利用はできなくなるため、人の流れを止めてしまい、周囲から注目を浴びるので、心理的負担も大きい。また、習熟した駅職員が少ない、事前連絡が必要、電動車イスのなかには利用できないタイプがあるなど、利用上の問題や設備上の不備な点がみられる。

D業務用エレベーター

昔、荷物用に使われていたものが、新幹線や在来線の主要駅にあり、事前に許可が必要なエレベーター。当然、荷物が通るべき場所を通らなければならず周囲からの注目を浴びることはないが、回り道をしなければならないなど、心理的な負担になることもある。かなり老朽化しているものもあり、今後改良が行われていくのかは不透明である。

E自由に使えるエレベーター

最近、新・改築した駅舎を中心に普及しており、車イスをはじめ、その他垂直移動にバリアを感じている人たちにとって、完成型といえる。バリアフリーなエレベーターの条件は、誰もが、事前連絡も、駅員の付き添いも必要とせず、分かりやすい場所で、いつでも利用できること。まさに、デパートのエレベーターの感覚である。今後は、このエレベーターの設置が当然のことになるであろう。


W.第2章

前章では、先行研究で明らかになった、身障者用トイレのあり方と、駅における垂直移動の様々な方法をまとめた。筆者はこれらを踏まえ、各駅の実態調査を行った。調査対象駅は第1章で述べたとおりであるが、これらの駅を調査対象とした理由は、まず自分の住む地域を知ることから始めたかったからである。研究にあたり、様々な文献に出会ったが、それらの多くは首都圏の大きな駅を対象にしたものや、「旅に出よう!」という大きなテーマのもとで書かれたものが多い。しかし、公共交通機関を使う人の多くは、日帰りのちょっとした外出や、毎日の通勤通学に利用しているのではないだろうか。

そこで、本研究では、調査対象駅を、筆者の最寄り駅であるJR横浜線「相原駅」を中心に、約1時間圏内で移動できる地域に定めた。さらに、JRと、京王という異なる鉄道会社の駅を調査することによって、鉄道会社ごとの対応の違いはあるのか。また、あるとすればそれはどんなことなのかを明確にする。

 調査項目は次のとおりである。

1.駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

   @自由に使えるエレベーターの有無

   Aエスカレーターの有無、車イス対応エスカレーターであるか

   B階段のみの場合どのように対応するのか(駅職員への聞き取り)

2.駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

   @自由に使えるエレベーターの有無

   Aエスカレーターの有無、車イス対応エスカレーターであるか

   B階段のみの場合どのように対応するのか(駅職員への聞き取り)

3.トイレの調査

   @身障者用トイレが設置されているか

   A管理状態はどのようになっているか(自由に使えるか)


X.第3章

以下は、2001年11月現在の調査結果である。

1.JR横浜線

●八王子駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

各ホームに、自由に使えるエレベーターと、車イス対応エスカレーターがある。
2年程前に、混雑緩和のため階段とエスカレーターが増設され、その際エレベーターも設置された。エレベーターはホームの中央に設置されており、2階にあがった後、改札まではかなりの距離がある。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

 北口(地上)には大きなショッピングビルとバスターミナル、タクシー乗り場があり、改札(2階)を出てから、各乗り場へ降りられるエレベーターが3ヵ所と、ショッピング街へ降りられるエレベーターが2ヵ所ある。いずれも午前5時30分から午前0時まで運転されている。

また、駅ビルには2階入口から直接入ることができる。ショッピング街へ降りるにはエスカレーターもあり駅ビル営業時間中(10時〜22時30分)にはこちらのエレベーターも使用できる。

南口(地上)へは、現在のところ階段のみ。近年中に車イス対応エスカレーターの設置が予定されているが具体的な期日は未定である。

トイレの調査

 身障者用トイレがある。男女トイレの入口の脇に、独立して設置されており、常時開放されているので自由に使える。

 <考察>

   横浜線始発駅であり、中央線、八高線への乗り換え駅であるため、1日の利用者数はかなり多い。筆者も 1998年より、通学の際、乗り換え駅として毎日利用してきたため、近年の駅の変化を細かく観察すること ができた。混雑緩和やバリアフリー対策にはここ数年に努力が見られ、まず構内に車イス対応エスカレーター (通常時は上り運転)が設置され、その後下りエスカレーターの設置、乗り換え専用階段の増設、エレベータ ーの設置へと段階的に整備が進んだ。また、中核都市の中心地であるため構外の整備に対するニーズも高かっ たが、北口駅前ターミナルの整備状況はかなりの完成型であるといえよう。ただし、商業用地ではない南口は 、地域住民以外の利用者が少ないことは確かだが、階段のみであるため早急に整備されるべきである。


 ●片倉駅 駅舎・改札地上 ホーム高架

 ・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  上り、下りホーム共に階段のみ。階段昇降機などもなく車イスはすべて人力で持ち上げての昇降となる。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  改札口が地上であるためそのまま外に出られる。エレベーター、エスカレーターは必要ない。

トイレの調査

  身障者用トイレは設置されていない。

<考察>

  駅周辺は静かな住宅街であり、都立高校の下車駅となっているものの、利用者は比較的少ない。ホームか ら改札へ下り階段は途中に踊り場が2ヵ所あるほどの長さで、車イスはもちろん、ベビーカーや買い物用カ ートを降ろすのもかなりの重労働であることが予測できる。また、改札を出たあと、駅前に自転車等が進入 するのを防ぐため、歩道の手前に4つの柵が互い違いに設置されている。これらは可動式なので、車イスで 通る際には取り外してもらうことになる。段差だけが車イスにとっての障壁ではないということを、改めて 考えさせられるが、そもそも自転車では進入しないという  ルールが守られてさえいれば、設置されるこ とはなかった柵ではなかろうか。


●八王子みなみ野駅 駅舎・改札橋上

 ・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

   自由に使えるエレベーターと、エスカレーターがある。エスカレーターは車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  線路の西側は高台で改札から駅前広場は地続きであるのでそのまま移動できる。駐輪場とバスターミナル ・タクシー乗り場が2階建てのようなつくりになっており、バスターミナル、タクシー乗り場へそれぞれエ レベーターで上がることができる。エスカレーターも設置されているが、こちらは車イス対応型ではない。 運転時間はいずれも午前4時30分から午前0時30分。東側の線路沿いは現在宅地開発中だが、こちら  にもエレベーターが設置されている。

トイレの調査

  身障者用トイレが設置されており、常時開放されているので自由に使うことができる。省スペース型回転ドア式(写真と詳細説明は後述12頁30行目、相模原駅の部分で記述)。

 <考察>

  1997年4月に開業した、横浜線全20駅の中で最も新しい駅であり、開業当初から、エレベーター、 エスカレーターが設置されていた。大学、専門学校等の下車駅となっているため、現在の利用者の多くは学 生であるが、駅周辺地域の宅地開発が急速に進められているため、今後、利用者は増加することが予想され る。垂直移動に対するバリアフリーは完成型であるといえるが、バスターミナルに通じるエレベーターと、 タクシー乗り場に通じるエレベーターがそれぞれ別のエレベーターであり、タクシー乗り場行きのエレベー ターの方が奥にあり目立たないため間違えやすい。また、バスターミナルとタクシー乗り場は高い柵で区切 られ行き来ができない構造であるため、間違えてしまった場合には、1階まで戻って、エレベーターを乗り 換えなければならない。そのためもう少し案内表示などをわかりやすくする工夫が必要であると思われる。


●相原駅 駅舎・改札・ホーム地上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーター、エスカレーターは設置されていない。1番線はそのまま東口改札へ出ることができる。1 番線から2番線へは長い階段を昇って跨線橋を渡る。2番線は6時から10時までと、16時から20時ま では、西口臨時改札が利用できるが、改札手前に3段ほどの階段があり、改札機の間隔が狭いため車イスで は通過できない。改札脇に荷物搬入用のドアがあり、車イスの場合は駅職員が付き添い、このドアを利用す る。通常、開放時間外は跨線橋を渡って1番線へまわるしかない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  改札口が地上であるため、エレベーター等は必要ないが、バスターミナルまでは、歩いて2分ほどの距離 があり、駅前に常駐しているタクシーもない。

トイレの調査

  身障者用トイレは設置されておらず、一般トイレ内は和式のみである。

 <考察>

  筆者の最寄り駅であり、高校時代からは通学のため毎日利用している駅である。小さな駅ではあるが、  周辺地域は住宅地であり、3つの大学の下車駅にもなっているため、利用者は比較的多い。小さな駅舎、ホ ームの屋根を支える柱などは現在も木造のものが使用されており、素朴な暖かさが感じられるが、健常者か ら見ても不便な点が多い。歩行は可能であっても下肢に障害のある人やけが人、高齢の人にとっては1番線 から2番線へ長い階段を昇って跨線橋を渡るのは、かなり困難なことであろう。車イスの場合は、事前連絡 があれば西口臨時改札を利用できるが、車イスを使用していなくても階段歩行が困難である人は多いという ことを考慮し、せめて西口改札を常時開放にするべきである。
  2001年11月より、ようやく駅舎の橋上化及び東西自由通路の工事が始まった。この工事にあたり、  「昔ながらの駅舎を残して欲しい」という声も多かったが、駅の利便性を求める声には勝てなかった。橋上 化に伴い、エレベーター、エスカレーターの設置が期待される。(2004年3月完成予定)


 
  ●橋本駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーターは設置されておらず、近年、各ホームに車イス対応エスカレーターのみが設置された。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  北口(地上)は、ショッピングビルとバスターミナル、タクシー乗り場があり、改札(2階)から、2つ のショッピングビルへは2階入口から直接入ることができる。ターミナルへは自由に使えるエレベーターが 2ヵ所設置されている。運転時間は午前4時10分から午前1時15分。車イス対応エスカレーターも設置 されているがこちらには呼び出しボタンが設置されている。

  南口(地上)は、京王相模原線橋本駅に接続しており、JR側からは非常にわかりづらい場所に自由に使 えるエレベーターが1ヵ所設置されているのみ。

トイレの調査

  身障者用トイレが設置されている。入口は独立しているものの、一般トイレの男子側入口の手前に設置さ れている。常時開放されており自由に使うことができる。

 <考察>

  JR相模線と京王相模原線への乗り換え駅である。JR相模線、京王相模原線が開業したことにより、駅 構内、及び駅周辺地域も改装・開発が進んだ。1日の利用者はかなりの数であるはずだが、ホームから改札 へのアクセスは階段が1ヵ所と、上り下りエスカレーターがそれぞれ1ヵ所設置されているのみである。朝 夕は混雑するため、この時間帯に人の流れを止めて、車イス対応エスカレーターを使用することはかなり困 難であることが予想できる。また、駅構外は北口駅前の区画整理、バスターミナルの改築が、今年9月に完 了し利用しやすくなったが、南口は京王線側の管轄区で現在も開発中で、もう少しわかりやすく、利用しや すいエレベーター等の設置が期待される。


●相模原駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  各ホームに自由に使えるエレベーターと、エスカレーターが設置されている。エスカレーターは上り下り とも車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  北口(地上)に、駅ビルとバスターミナル、タクシー乗り場があり、自由に使えるエレベーターが2ヵ所 設置されている。運転時間は午前4時10分から午前1時15分。駅ビル横にエスカレーターもあるがこち らは車イス対応型ではない。

  南口(地上)は駐輪場と、一般車両の待機場所がありこちら側にもエレベーター が1ヵ所設置されてい る。運転時間は北口同様。

トイレの調査

 身障者用トイレが設置されている。最近になって後付けで設置されたものらしく、省スペース型の回転ドア式が採用されている。半円状になったドアの前まで進み、ドアを右に引くと、ドアが自分の背後へ半回転しその場がトイレ内のスペースとなる。中からカギをかけないまま、15分経過すると自動的にドアが元に戻るいたずら防止機能付きである。

<考察>
 相模原市の主な公共施設(市役所、市民会館など)への最寄り駅であり、利用者は市民が多い。線路沿いには在日米陸軍相模補給廠があるため、外国人利用者も多い駅である。5年程前に、駅舎、及び駅前の改築整備工事が完了し、利用しやすくなった。ただし、改札を出てから、バスターミナルへ降りる経路がわかりづらいように感じた。エレベーターも、せっかく設置されているのに案内表示などが不足しており、初 めて利用する人にも、わかりやすい工夫が必要であると考える。



●矢部駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

   エレベーター、エスカレーターは設置されておらず、階段のみの移動となる。階段昇降機などもなく、  車イス使用者が利用する際は、すべて人力で車イスごと持ち上げて昇降することになる。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  北口(地上)、南口(地上)ともに、階段のみ。こちらも、構内同様、人力での移動となる。

トイレの調査

  身障者用トイレは設置されておらず、一般トイレの入口は3段ほどの階段がある。

 <考察>

  小さな駅ではあるが、大学、高校の最寄り駅であり、地域住民の利用も多い。駅職員の話によると、特に 最近、エレベーターやエスカレーターの設置予定はないのかという利用者の声を多く聞くようになったとい う。しかし、現状では設置の予定はなく、事前に連絡を受けて、車イスを持ち上げる人員を確保しておくの が精一杯であるとのこと。両隣の駅と比較すると、取り残されているかのような現状である。これには、利 用者数の違いが大きく関係していると思われるが、駅と駅の間隔が短いことも影響していると考えられる。 地域住民としては、どちらの駅まで行くのもそれほど変わらない距離ならば、利用しやすい駅を使うのが当 然であろう。だが、それではますますこの駅が取り残されてしまうのではないだろうか。今後、地域住民の 強い働きかけとJRの一層の努力を望む。

 ●淵野辺駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーターは設置されていないが、車イス対応エスカレーターが設置されている。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  南口(地上)にバスターミナルとタクシー乗り場があり、自由に使えるエレベーターが設置されている。 運転時間は初電〜終電運行時間中。

  北口(地上)は、階段のみ。

トイレの調査

  身障者用トイレは設置されていない。

 <考察>

  市営公園、市営プール(冬季はスケートリンク)、市立図書館等があり、付属中学・高校併設の大学と、 いくつかの高校の最寄り駅となっており、1日の利用者数はかなり多い。しかし、階段1ヵ所と上り下り各 エスカレーター1ヵ所のみの設置状況では、朝夕はかなりの混雑となる。橋本駅同様、車イス対応エスカレ ーターの使用は困難であることが予想され、自由に使えるエレベーターの設置が望まれる。また、公共施設 は南口側に集中しているため、バスターミナルの整備等、南口は充実しているが、付属中学・高校併設の大 学のスクールバス乗り場は北口にあり、今後、北口の整備も必要であると考えられる。


●古淵駅 駅舎・改札地上 ホーム地下

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  各ホームに自由に使えるエレベーターが設置されている。エスカレーターも設置されているが車イス対応 型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  改札口が地上であるためそのまま外に出られる。エレベーター、エスカレーターは必要ない。

トイレの調査

  身障者用トイレが設置されている。また、改札を出た脇にも公衆トイレが設置されており、こちらにも身 障者用トイレが設置されている。どちらも常時開放されており自由に使うことができる。

 <考察>

  1987年3月に開業した比較的新しい駅である。駅周辺地域は、住宅地であり、利用者のほとんどは地 域住民である。数分歩くと大きなショッピングセンターがあるが、こちらは国道沿いであるため、買い物に は車を利用する人が多いようである。改札の外にも身障者用トイレがあることは大変評価できる。


●町田駅 駅舎・改札橋上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  中央口、ターミナル口の2つの出口がある。各ホームの端(八王子寄り)に、エレベーターが設置されて いるが、改札(中央口)の外へ直接通じているため、駅職員の付き添いが必要となる。各ホームに車イス対 応エスカレーターも設置されている。しかし、ターミナル口へのアクセスは、階段のみとなる。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  中央口の北側は駅ビルや、大きなショッピングビルが立ち並ぶ。駅前広場(2階)から、各ショッピング ビルの2階入口がつながっており、そのまま入ることができる。その他のショッピング街と小田急線乗り場 までも、広場から緩やかなスロープでつながっている。また、「バスセンター(地上)」へはスロープと、 バス会社が設置した一人乗りリフトがあり、インターホンで係員を呼び、対応してもらう。運転時間はノン ステップバス運行時間中。

  中央口の南側は階段と上りエスカレーターのみであったが、近年、自由に使えるエレベーターが新設され 階段と上り下りエスカレーターも改装された。

 ターミナル口(2階)の北側は「バスターミナル(地上)」があり、わかりにくい場所ではあるが自由 につかえるエレベーターと、上りエスカレーターが設置されている。南側は駐輪場と住宅地であり階段のみ。

トイレの調査

  身障者用トイレが男女トイレの中央に独立して設置されている。常時開放されており自由に使うことがで きる。また、中央口北側の駅ビル横に公衆トイレがあり、こちらにも身障者用のトイレが設置されている。

 <考察>

  市内各地からのバスが集結する「バスターミナル」「バスセンター」と呼ばれる大きなターミナルが2つ あり、市民のほとんどが、毎日の通勤通学や、外出に利用する駅である。また、小田急線への乗り換え駅で あり駅周辺は町田市の中心街である。
  ホームの一番端に設置されているエレベーターは、かなり古く、大きな看板がホームのあちこちに表示さ れてはいるものの、「エレベーター」という文字と、身障者のシンボルマーク、そして赤い矢印だけが描か れたもので、その矢印の方向にそって、まさかホームの一番端まで行くことになるとは想像しがたいもので ある。さらに、たどり着いたエレベーターには、インターホンがついており、それを押して駅職員が来るの を待つ。そして、職員とともに2階へ上がると駅長室や事務室の前を通り抜け、外側には「駅長室」と表示 されたドアから中央口改札の外へ直接出ることになる。反対に、改札の外からホームまでは、「駅長室」と 表示されたドアの脇にあるインターホンを押し、先ほどと逆のルートをたどることになる。
  また、その名のとおり、バスターミナル側に出ることができるターミナル口には、エスカレーター、エレ ベーターどころか、未だに自動改札機も設置されておらず、この改札から入って別の駅の自動改札機で外に 出ると、キセル乗車の疑いをかけられトラブルになることがしばしばある。利用者の多くが中央口を利用す るのは事実であり、そのために中央口へ通じる階段、エスカレーターは電車が到着するたびにかなりの混雑 となる。それならば、ターミナル口の改装をしてこちら側に自由に使えるエレベーターを設置するなど、市 の玄関口の駅として混雑緩和とバリアフリー対策への一層の努力が必要である。


●成瀬駅 駅舎・改札地上 ホーム高架

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

 エレベーター、エスカレーターは設置されておらず、階段昇降機などもない。車イスはすべて人力で持ち上げ、階段を昇降することになる。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

 改札口が地上であるため、北口はそのまま出ることができる。線路をくぐって反対側の南口は高台になっており、こちらにはエレベーターが設置されている。なお、このエレベーターは地域住民が自転車で、北口と南口を行き来するためにも利用できるものとなっている。運転時間は午前4時30分から午前1時。

トイレの調査

 身障者用トイレが設置されている。常時開放されており自由に使うことができる。

<考察>

  市立の体育館があり、都立高校2校の最寄り駅でもある。駅周辺は静かな住宅街であり、通勤通学のため利 用者もかなり多いと思われる。前述の矢部駅にも共通するが、1つのホームの両脇に線路が通っている、い わゆる島ホームであるため、たった1ヵ所エスカレーターやエレベーターを設置するだけで問題は解決され ると思われる。駅職員によると、設置の予定はあるが具体的な期日までは決まっていないとのこと。駅職員 の説明ぶりが大変慣れた様子であったことから、日ごろから問い合わせが多く、ニーズは高いものと予想で きる。また、車イスを持ち上げ、長い階段を上り下りしたことがある現場の職員であるからこそ、エレベー ター、エスカレーターの必要性を実感している様子であった。


2.京王相模原線

●橋本駅 駅舎・改札橋上 ホーム高架

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーターが設置されているが、改札の外へ直接通じているため、駅職員の付き添いが必要となる。エスカレーターも設置されているがこちらは車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

 南口(地上)へは、ホームからエレベーターで直接降りることができる。(ホームが3階、改札が2階、地上が1階ということになる。)北口(地上)は、改札からつながるエントランスを通りJR横浜線に接続しており、地上へのアクセスはJR横浜線と共通しているため、前述(11頁、26行目)の、横浜線橋本駅の部分の記述をもって省略する。

トイレの調査

  一般トイレの男女それぞれの中に、身障者用トイレが設置されている。

 <考察>
 京王相模原線の始発駅である。急行で新宿まで1時間程で行くことができ、運賃もJRに比べ安価であるため、都心への通勤通学に利用する人が多い。
 この駅に関しては評価できる点が2点ある。1点は、改札口である。JRでは通常自動改札機はすべて人が一人通れる程度の間隔で設置されており、車イスの場合、一番端の手動開閉式の改札を窓口の係員に声をかけて通らねばならない。しかし、この駅の自動改札機は、中央の改札機の間が広くなっており、車イスでも自由に通ることができる。また、ベビーカーや、買い物用カート、スーツケースなども通りやすい。視覚障害の人にとっても、間隔が広ければより安全であろう。もう1点は、トイレである。一般トイレの入口と内部が広くとってあり、男女トイレのそれぞれのなかに、身障者用トイレが設置されているのである。

 しかし、残念なことに、実際にこれらの設備を車イス使用の人が利用することはほとんどないと思われる。なぜなら、この駅のエレベーターはホームから改札の外に直通しているのである。たとえ、係員に声をかけずに自動改札を通過することができても、たどり着けるのはトイレまで。そこからホームに上るためには、結局改札の外から駅職員に付き添われてエレベーターに乗るしかないのである。この矛盾点さえ克服できれば、この駅のバリアフリーはほぼ完成型であると評価できる。改善への一層の努力を期待する。

●多摩境駅 駅舎・改札橋上 ホーム高架

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーターは設置されていない。上りエスカレーターのみが設置されているが、車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  エスカレーター、エレベーターは設置されていないが、すべて緩やかなスロープになっている。

トイレの調査

  身障者用トイレは設置されていない。

 <考察>

   各駅停車のみ停車する小さな駅で日中は駅周辺も構内も閑散としているが、駅周辺地域は現在宅地開発中であるため、今後、利用者は増加すると思われる。周辺地域の開発に伴い、駅舎や駅前も改装中である。駅職員によると、将来的には車イス対応型のエスカレーターやエレベーターが設置されるとは思うが、具体的な予定はたっていないとのこと。現在は、車イスの前輪(キャスター)を上げて後ろ向きに一般用エスカレーターに乗せる方法で対応しているという。通常上り運転になっているエスカレーターもキー操作で下りに反転することができる。しかし、この方法は、習熟した介助者であり、車イス使用者側も慣れていないと危険である。また、通常この駅は、職員が1名のみであるため、車イス介助の際は隣の橋本駅から応援を要請している。そのため利用には事前連絡が必要となる。今後の駅周辺の開発とともに、駅構内の改装にも努力が必要であると思われる。


  ●南大沢駅 駅舎・改札橋上 ホーム地上

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  自由に使えるエレベーターが設置されている。エスカレーターは上りのみ設置されているが、車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  エレベーター、エスカレーターは設置されていないが、もともと丘陵地であるため改札を出で右側はそのままアウトレットモールへ通じるエントランスとなっている。アウトレットモールを抜けた先が、さらに小高くなっており、都立大学へとつながっているが、すべてスロープとなっている。また、改札を出て左側がバスターミナルとなっており、こちらへもそのまま移動できる。エントランスの下を通る一般道の歩道へもスロープが延びている。

トイレの調査

 身障者用トイレが設置されている。常時開放されており自由に使うことができる。

<考察>

   急行停車駅で、宅地が多く、都立大学の下車駅にもなっているため、利用者は多い。1年ほど前にアウトレットモールがオープンした際、駅前の整備が完了した。現在、2001年12月オープン予定の映画館が建設されており、今後、利用者はますます増加するものと思われる。各ホームの自由に使えるエレベーターは、普段から多くの人が利用している様子であったが、その分、車イス使用の人が利用したい時に、優先的に利用できるかどうかが問題となる。駅周辺はすべてスロープになっているが、主に自転車の通行を考慮したスロープであると思われ、傾斜が緩やかな分、かなりの大回りをしなければならない構造である。利用者数に対して、自動改札機の数が少ないように感じられ、朝夕は混雑が予想される。橋本駅のように改札機の中央を広くするなどの工夫を含めた、改札口の拡張と、スロープの改善の2点がこの駅の課題となるが、その他の点では比較的評価できる。

●京王堀之内駅 駅舎・改札地上 ホーム高架

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

 エレベーターは設置されていない。上りエスカレーターのみが設置されているが、車イス対応型ではない。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

 バスターミナルへは10段ほどの階段になっているが、脇にスロープが設置されている。

トイレの調査

 駅構内に身障者用トイレは設置されていなが、駅前のショッピングセンター内に身障者用トイレが設置されている。

 <考察>

  各駅停車のみ停車する駅で、周辺は閑静な住宅街である。ホームから改札までの移動方法は前述の多摩境駅同様であり、やはり、事前連絡なしでは利用できない。駅前がすぐに、丘陵地を切り拓いたバスターミナルになっているが、10段ほどの階段があり、よく探すと階段から少しは離れたところにスロープがあることに気づくという構造である。なぜ、駅舎がたった10段分高くなっているのかということ自体が疑問だが、せめてスロープがあるという案内表示をつけるべきである。また、バスターミナルから高台の住宅街へエスカレーターが延々と設置されているが、幅の狭い型のもので上り運転のみである。駅周辺は一見するとモダンな風景だが、車イス使用の人をはじめ、段差の歩行が困難に感じる人にとっては、非常に利用しづらい駅であるといえる。外観よりも、中身の充実した駅への改良が必要である。
                    

●京王多摩センター駅

・駅構内の調査(ホームから改札の外へ出るまでのアクセス面)

  エレベーターが設置されているが、改札の外へ直接通じているため、駅職員の付き添いが必要となる。エスカレーターも設置されているが、車イス対応型ではない。また、東側の改札は橋本駅同様、自動改札機の中央の間隔が広くなっている。

・駅構外の調査(改札を出てから地上までのアクセス面)

  南口は自由に使えるエレベーターが設置されており、1階がタクシー乗り場、2階がバスターミナル、3 階が改札となっている。また、改札をはさんで東側、西側それぞれに京王クラウン街というショッピングモ ールとなっており、東西の端に自由に使えるエレベーターが設置されている。1階がタクシー乗り場、2階 がバスターミナル、3階がショッピングモール(改札)となっているが、この西側のエレベーターが新宿方 面のホームと、東側のエレベーターが橋本方面のホームと直接つながっており、それぞれ4階がホームにあ たる。通常は1階から3階までが自由運転となっており、4階へはインターホンを押して駅職員を呼び、ホー ムまで付き添ってもらうことになる。

トイレの調査

 身障者用トイレが設置されている。常時開放されており自由に使うことができる。

<考察>

 小田急多摩線、多摩都市モノレール乗り換え駅である。駅前に大きなイベントホールやショッピングセンター、テーマパークがあり、いくつもの大学、高校の下車駅になっている。改札を出てからのアクセス面は充実しているといえるが、これだけ利用者の多い駅で、ホームから自由に使えるエレベーターが設置されていないのが最大の難点である。また、ショッピング街からホームへ直通しているエレベーターも、利用する電車の行き先によって、東側と西側のものを使い分けなければならない点も不便であり、説明もエレベーターの脇に設置されたインターホンに小さく表示されているのみで、わかりづらい。

西側の改札口は大きく、多くの人はこちらの改札口を利用するはずである。しかし、改札機はすべて標準的な人が一人通れるほどの間隔で設置されており、間隔の広い改札機が設置されている東側は、小さく目立たない改札口である。

   イベントホールやテーマパークなどの最寄り駅は、遠方から来て初めてその駅を利用する人が多いということを念頭におき、初めて利用する人にもわかりやすい案内表示や設備づくりをするなど、すべての人に利用しやすい駅を目指す必要があると思われる。


Y.第4章 

第3章では主に、各駅のハード面について調査結果をまとめたが、駅により、整備状況や問題点も多様であり、これらは、駅の新旧や規模の大小、地域性によるものであると考えられる。そのため、それぞれのニーズを充足するためには、それぞれの努力を必要とするものであるといえる。

各駅での駅職員への聞き取り調査と、障害を持つ人からの意見をもとに、公共交通機関そのものに共通して当てはまる課題を以下にまとめ、これらを踏まえ本研究の結論とする。

<課題>

JR横浜線矢部駅で、聞き取りに大変丁寧に対応して下さった駅職員はバリアフリーの必要性を実感している様子で、「最近、そういった(エレベーターを設置して欲しいという)お客様の声が多いので、そのたびに上のものには伝えているんですが、上のものの反応が・・・」と言葉を濁した。「隣の駅は(エレベーターが)ついてるんですけどねぇ。」と、とても申し訳なさそうに語るその職員は、最後に「申し訳ありません。駅長にはお客様からのご意見があったということをきちんと伝えておきますので。」と頭を下げた。このように、直接利用者の声を聞き、介助に対応している現場の職員と、駅長クラスの上層部者では、問題の認識に温度差があるということがどの駅にも共通していえる。

利用者の立場で、利用しやすい駅を目指すには、各鉄道会社ともに現場の声にもっと耳を傾けるべきである。毎日、その駅で多くの利用客に対応している職員の意見はもちろん、その駅の利用にバリアを感じている人の意見を取り入れるべきである。特に、この駅のように、小さな、地域に根ざした駅では、地域住民と鉄道会社とが一体になって、駅の改善と地域の活性化を図ることが重要であると考える。

反対に、大きな駅では、エレベーターの設置が早い時期に実現していたゆえに、現在では利用しづらくなってしまった場合もある。JR町田駅、京王橋本駅、京王多摩センター駅のような、ホームから改札の外へ直通しているエレベーターは、車イス専用である。これほど大きな駅であれば、ベビーカーや買い物用カートを使用する人、あるいは旅行用のスーツケースなどを持っている人も少なくないだろう。これらのエレベーターが設置された頃は、おそらく、車イスの垂直移動を克服することのみが考えられていて、利用者もそれほど多くはなかったのであろう。そして、時代は変わり、自由に使えるエレベーターが設置される駅も、徐々に増えてきた。また、駅職員の話では、「事前に連絡をいただければ確実ですが、インターホンを押してもらえれば、すぐ職員が駆けつけます。行き先の駅を言っていただければそちらの駅にも連絡とりますから。」ということだった。しかし、実際にこのエレベーターを利用したことがある人によると、「忙しいとなかなか来てくれない。」「ひどい時は5分以上待たされる。」というのが実情である。そうなると、このエレベーターは「ないよりマシ」という評価を受けることになってしまい、自由に使えるエレベーターの新設が望まれる。しかし、同じ路線で未だに、エスカレーターもエレベーターも設置されていない駅があるということと比較すれば、たとえ旧型であってもこれらの駅にはすでにエレベーターが設置されているのである。したがって、これらの駅に自由に使えるエレベーターが設置されるまでには、さらに時間がかかることになるであろう。JR町田駅では、近年ようやくエスカレーターが設置され、これは車イス以外の垂直移動にバリアを感じる方に対するせめてもの配慮だといえよう。

このような駅では、これ以上のハード面の改善が困難であるならば、それらをカバーするだけのソフト面の充実が課題となる。インターホンの呼び出しには即座に対応できるだけの人員を常に配置することや、車イスで利用する際の利用方法をわかりやすい場所に案内表示をするなど、現状設備をいかに使いやすくするかを考え、克服してゆくべきである。

本研究の調査では京王線に特に多く見られたが、エスカレーターが上り運転のみである駅がある。車イスでの垂直移動に関しては、キー操作次第で上りにも下りにもできるのでエスカレーターは1ヵ所あれば対応できる。しかし、下肢に障害のある人や、高齢の人の中には、ひざに負担がかかるため、階段を下りることにバリアを感じる人が多いのである。これらの人たちは車イス使用の人よりも、比較的、駅の利用頻度は高く、利用するたびにエスカレーターを反転するわけにもいかない。このため、下りのエスカレーターの設置が課題となる。自由につかえるエレベーターさえあれば問題ない。しかし、構造上の問題や、費用の面から設置できない場合もある。後から設置されたエスカレーターの多くは、もともとあった階段の左(または右)端に設置されている。その分、もとの階段部分は狭くなってしまうため、1つの階段に1ヵ所しか設置できないということは納得できるが、よほど小さな駅でない限り、階段は2ヵ所以上あり、それぞれに1ヵ所ずつ設置すればよいのである。また、介助方法を習熟している介助者さえいれば、車イス対応型エスカレーターではなく、標準型のエスカレーターでも車イスの移動は可能である。自由に使えるエレベーターの設置が不可能ならば、エスカレーターは上り運転と下り運転の2ヵ所設置することが妥当であると考える。

車イス使用の人から、駅での様々な経験を聞くことができたが、「どの駅でも職員は(介助に関する)正しい知識や技術は不足していても、職員なりに一生懸命対応してくれていると思う。」という意見も多かった。しかし、その一生懸命な心遣いが裏目に出ることもしばしばある。

電車に乗る際に、構内放送で『ただ今、○号車に車イスのお客様が乗車中です。××までいらっしゃいます。』と、言われたことがある人もいた。発車までに通常より時間がかかってしまう場合に、乗降中であることを伝えることには意味があるが、果たして行き先を乗客すべてに知らせることが必要であろうか。また、行き先を確認するのは、降車の際の介助者を配置するための配慮なのであろうが、例えば、電車での移動がたった1駅であったりすると、目的地の駅側の準備が整うまで、電車に乗せてもらえないという事態が発生したり、気まぐれに途中下車をすることもできない。

事前連絡をして駅に行くと、待機していた職員はすぐに車イスを押そうとする。実際には車イスを使用していても、上肢にはまったく障害がなく、車イスを自走できる人も多い。介助に不慣れな初対面の他人に、混雑した駅構内での車イス操作を任せるより、自走した方が安心だという意見の人もいる。

電動車イスや大型の車イスの場合、対応できないので駅側で用意した車イスに乗り換えて欲しいと言われることもある。だが、重度の障害を持つ人の中には、自分のために設計された車イスに座っていることでやっと安定を保つことができているという人もおり、障害が重度化するほど、標準型ではない特注の車イスとなる場合が多い。

これらを踏まえて、鉄道会社は障害を持つ人に対する正しい知識と介助方法を学習した上でハード面の整備を行い、同時に、現場の職員にも正しい知識と最低限の介助技術を習得させ、過度にならない配慮を徹底することが課題であると考える。

<結論>

バリアフリーな街づくりを具現化するため、2000年11月15日「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」通称、交通バリアフリー法が施行された。これにより、1日あたりの平均利用者数が5000人以上の駅には、バリアフリー化が義務づけられるようになった。利用者が多い駅ほど需要が高いことはもちろんだが、実際には、1日の平均利用者数が5000人をこえる駅は、JR6社合計で4635駅中わずか953駅(平成13年3月31日現在 国土交通省調べ)である。5000人という数字にこだわらず、近くに病院や施設など、障害を持った人や、高齢の方が通う場所がある駅も義務づけの対象として検討すべきであると考える。
 調査の結果、駅は大きく分けて2種類に分類することができると考える。1つは、駅周辺に居住する者が通勤通学をはじめ、外出の際の出発点として毎日のように利用する地域密着型の駅である。もう1つは、駅周辺にテーマパークやイベントホールなどがあり、遠方から初めてその地を訪れる人が目的地として利用する駅である。当然、前者よりも、後者の方が1日の利用者数は多く、交通バリアフリー法の対象となり、段差の解消、エレベーター、エスカレーターの設置等の対策が早急に進められるであろう。しかし、本研究では調査対象を筆者の居住地区周辺に絞ったため、ほとんどの駅は前者の地域密着型である。バリアフリーが法として義務づけられたことにより、整備の優先順位が利用者数によって決められてしまったことになる。つまり、地域密着型の小さな駅は、大きな駅の整備がすべて整うまで後回しにされることになったといえるのではなかろうか。全体的に見ればある駅における移動の円滑化は促進されるであろうが、移動には「出発点」と「終着点」があり、鉄道においては「乗る駅」と「降りる駅」があるのである。目的地の駅が整備されていても、居住地域の駅から乗ることができなければ、本当の意味で「公共交通機関を利用した移動」の円滑化を促進しているとはいえない。
 駅というものは、ホームから改札までは鉄道会社、改札からターミナルまでは市町村やバス会社などと、複数の機関が共同で管轄しているものである。本研究における、橋本駅、町田駅、多摩センター駅のように、JRと私鉄各社の乗り換え駅は特に、どこまでがどちらの管轄になるのか、設備の改装にどの機関がどれだけの予算を費やすのかといった、責任面、金銭面での折り合いがつかずに、整備の遅れがあることも考えられる。
 しかし、公共性が強いとはいえ、駅は鉄道会社にとって自社の大切な商品のはずである。どうすれば人が集まるのか、利用者が満足するのかを考えていくべきであるし、市町村などの各自治体は、街の玄関口として位置づけ、活性化していく方策を考えていくべきであろう。

結論としては、駅は鉄道会社と市町村との2者で運営し、地域のコミュニティの1つとして育てていくことが有効であると考える。地域には図書館や体育館、ホール、市町村の出張所、老人ホーム、保育所など、その他たくさんのコミュニティ施設が存在する。それらの施設ではエレベーターや車イス用トイレの需要は高いが、それに対し何の違和感もなく、バリアを意識することなく利用することができるのは、設置するのが当然の条件とされているからである。駅もこれらの施設と同様に捉えることにより、自然に人々が集まり、誰もが利用できる施設へと改善してゆくことができないだろうか。公共交通機関の整備が進めば、誰もが、自らの意思で、自由に移動ができるようになる。移動することが可能になれば、各地の宿泊施設、テーマパークも障害を持った人や高齢の方の利用が増加し、そこでも利用者側の需要が高まれば、設備の改善が図られるようになる。そうすることによって、すべての人が地域でも、旅先でも安心して過ごすことができる社会になっていくのではなかろうか。


Z.終わりに

公共交通機関におけるバリアフリーに関心を持ったきっかけは、身体障害者授産施設での実習やボランティア活動を通して、障害を持つ人に接し、共に外出することで、その難しさを体感したことであった。公共交通機関の利用が難しい故に、施設にとじこもりがちな入所利用者に付き添って外出した際、そのいきいきとした笑顔にバリアフリー化の必要性を実感し、その日から、どうすれば障害を持った人も安心して外出できるのかを考えるようになった。
 本研究の調査を通して、改めて自らの居住地域を見つめなおすことができた。毎日のように利用している駅でも、車イスを使用する人の視点に置き換えてみるだけで、まったく知らない場所のようであり、その人の立場になって考えるということがいかに難しいことであるかを実感した。また、公共性が高いということは、様々な人が利用するということであり、それだけ多種多様なニーズが存在し、そのすべてを克服することは難しい。しかし、小さなことから、できることから1つ1つ変えていくことが、大きな進歩につながっていくのではないだろうか。
 普段は、生活の中でバリアを感じない人は、「あれ?」と感じる瞬間がほんの少しでもあったなら、立ち止まって「何がおかしいのか」を考えて欲しい。そして、それを声に出して誰かに伝えて欲しい。障害を持つ人は、「あの駅は使いにくいから」と、あきらめて遠ざけてしまうのではなく、「どうして使いにくいのか」「どうすれば使いやすいのか」を声にして訴えて欲しい。すぐには実現しなくても、そういった小さな声が多くの人に伝わり、また集まって、やがて大きな力になるに違いない。 
 研究に取り組むに当たって、聞き取り調査に協力してくださった、JR横浜線、京王相模原線各駅の職員の皆様にも感謝の意を表し、あわせて、各駅のバリア克服に向け、一層の努力を心からお願いし、この未熟なる論文を閉じます。


参考文献および参考ホームページ一覧

◆参考文献◆

秋山 哲男 「都市における身体障害者のモビリティ確保に関する研究」1990年

川内 美彦 『バリア・フル・ニッポン−障害を持つアクセス専門家が見たまちづくり−』現代書館 1996年

『ハンディマップ駅 ’98 がったん』 ハンディマップがったん作成委員会 1998年

◆参考ホームページ◆

「週刊ハンディマップがったん」

http://homepage2.nifty.com/gattan/ 2001年10月

「国土交通省ホームページ」

http://www.mlit.go.jp/ 2001年11月

「小西邦幸のホームページ」

http://www02.so-net.ne.jp/~konin/index.html 2001年11月


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